経営層は、なぜ“わかりやすいKPI”に支配されてしまうのか
- 5月1日
- 読了時間: 2分
〜NPSも応答率も氷山の一角。数字が増えるほど見えなくなるもの〜
「数値は確実に改善しているのに、現場の手応えが伴っていない」
「顧客との関係が良くなっている実感はあるのに、指標に表れない」
経営に関わる方であれば、一度はこのような違和感を覚えたことがあるのではないでしょうか。
このとき、私たちはしばしばNPS(顧客推奨度)や応答率といった「わかりやすい指標(KPI)」に頼ろうとします。
しかし、この「わかりやすさ」にこそ、大きな落とし穴が潜んでいます。
指標が現実の“見え方”を歪めてしまう
企業経営は複雑です。だからこそ、比較や説明がしやすい「数値」を意思決定の共通言語にするのは自然なことです。
しかし、NPSも応答率も、顧客体験という巨大な氷山の「一角」にすぎません。
問題は、指標が設定されると、組織が自然とその数字に最適化されてしまうことです。
たとえば、カスタマーサポートで「応答率」が重視されれば、とにかく早く電話に出ることが優先されます。しかし、早くつながってもその後の対応が不十分であれば、顧客の不満はかえって高まります。「応答率が改善した」という事実だけが強調され、本質的な顧客体験の悪化が覆い隠されてしまうのです。
見えている数字があるからこそ、見えなくなってしまう現実がある。この逆説を理解しない限り、どれだけ精緻なKPIを導入しても、経営は現場のリアルから乖離していきます。
経営としての問い:測れないものにどう向き合うか
これからのマネジメントに求められるのは、単に指標を設定し管理することではありません。その指標が「何を表しており、何を表していないのか」を理解し続ける視座です。
指標が「目的化」していないか?
数値の改善そのものが目的となり、その背後にある顧客の文脈や感情が置き去りになっていないか。
現場の「違和感」を例外として処理していないか?
数値と実感の間にズレが生じたとき、現場の手触りを「測りきれない現実の一部」として捉え直せているか。
「測れないもの」を議論する場があるか?
指標には表れない顧客との多層的な関係性について、経営会議で言葉を交わすことができているか。
数値の改善に注力するだけではなく、その数値の奥にある意味を読み解く。この思考プロセスそのものが、これからの経営において重要な価値を持つようになります。


