「ありがとう」が多い職場は、本当に健全なのか
- 5月1日
- 読了時間: 3分
更新日:16 時間前
〜称賛があふれる組織で、なぜ人は疲弊していくのか〜
「社内SNSには『ありがとう』があふれているのに、なぜ現場の疲弊感は消えないのか?」
経営層やマネージャーの方から、最近このようなご相談をよくいただきます。
サンクスカードや「いいね」の仕組みを導入し、表面的にはポジティブな空気が保たれている。それなのに、現場の息苦しさは消えず、離職率も下がらない。この「ねじれ」の正体は、一体何なのでしょうか。
感謝を伝えることは、もちろん素晴らしい行為です。しかし、「ありがとう」が組織の制度として推奨され、「良いこと」として定義された瞬間、少しずつ意味合いが変わってきます。
「ありがとうを言わなければならない」という無言の圧力。
「あの人はたくさん感謝されているのに、自分はされていない」という比較。
光が強くなればなるほど、影は濃くなります。ポジティブな空間が強調されるほど、現場が抱える不満や違和感、つらかった経験といった「ネガティブな感情」は行き場を失い、組織の中に静かに蓄積されていくのです。
カスタマーサポートの現場が抱える「感情の負債」
この問題は、カスタマーサポートのような顧客接点の現場で特に深刻です。
たとえば、あるオペレーターは午前中にお客様から「本当に助かった、ありがとう」と感謝され、やりがいを感じます。
しかし午後には、理不尽なクレームで厳しい言葉を浴びせられる。この極端な感情のジェットコースターに毎日乗せられていれば、どれほど優秀な人材でも心はすり減っていきます。
このような状況に対して、「もっと社内でありがとうを増やそう」というアプローチは、本質的な解決にはなりません。
むしろ必要なのは、ネガティブな感情を適切に吐き出し、組織として受け止めることができる環境の整備です。
経営としての問い:感情の揺らぎをどう設計するか
感謝を増やすことと、組織が健全であることは、必ずしも同義ではありません。
これからのマネジメントに求められるのは、ポジティブな文化を強制することではなく、「感情の揺らぎ」を前提としたマネジメント設計が重要です。
制度化された感謝になっていないか?
「ありがとう」は関係性の中から自然に生まれているか。それとも「やるべきこと」として消費されていないか。
ネガティブな感情の「出口」はあるか?
つらかったことや不満を、安心して語り、組織として引き受けられる構造が存在しているか。
光の裏側にある「影」を見落としていないか?
称賛の裏側で、語られないまま蓄積されている「感情の負債」はないか。
もしまだ明確な答えが見つからないのであれば、それは文化の問題ではなく、「組織の感情をどう扱うか」というマネジメントの構造的な課題かもしれません。



