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「うちは特殊だ」と言う組織から、壊れていく

  • 4月6日
  • 読了時間: 5分

更新日:2 日前

変わらないものが、最初に壊れる

——前提にしがみつくほど、構造は取り残される


高齢化が問題の本質ではない——構造化を先送りしてきた組織に突きつけられる現実



経営に関わる立場にある方であれば、こうした未来を一度は想像したことがあるのではないでしょうか。オペレーターの平均年齢が65歳に達し、顧客の平均年齢も70歳前後となる。デジタル化のスピードは年々加速し、サービスは複雑化し続けている。そのような環境の中で、カスタマーサポートの現場はどのように機能していくのか。

この未来は本当に訪れるのでしょうか。それとも、テクノロジーの進化が先行し、このような状況そのものが成立しない形へと移行していくのでしょうか。経営としてどのような前提を置くのかによって、いま打つべき一手は大きく変わります。しかし実際には、この問いが明確に言語化されないまま、日々の課題対応に埋没しているケースも少なくありません。


現場に目を向けると、課題はより具体的な形で現れています。人が定着しない、採用が難しい、業務の難易度が高い、そして高齢化が進んでいる。これらはどれも事実であり、現場にとっては切実な問題です。しかし、その一つひとつに対処していくことと、構造そのものを問い直すことは、必ずしも同じではありません。




なぜ構造は見直されてこなかったのか


では、なぜこの構造がこれまで大きな問題として顕在化しなかったのでしょうか。その背景には、人的資源に依存した運用が成立していたという前提がありますが、それは単に「人に頼っていた」という一言で片付けられるものではありません。

むしろ、その時々においては、合理的な選択が積み重なってきた結果でもあります。業務をシステム化しようとすれば高額な開発投資が必要となり、仕様を定義するための業務整理にも相応の工数がかかる。プロセスを設計し、ナレッジを構造化するためには、それを担う人材の育成や確保が不可欠ですが、その余力を持てる組織は限られていました。結果として、現場の経験やスキルに依存する形で業務を回すことが、最も現実的で効率的な選択となっていたのです。

さらに言えば、顧客対応という領域は、一定の“曖昧さ”を内包することで成り立ってきた側面もあります。個別性の高い問い合わせに対しては、標準化されたプロセスよりも、現場の判断のほうが柔軟に対応できる。この前提がある限り、完全な構造化や形式知化には限界があると考えられてきました。

このように、これまで構造化が進まなかったのは、決して怠慢ではなく、その時代における合理性の結果でもあったと言えます。


それでも、いま前提は崩れている

しかし、その前提は確実に変わりつつあります。採用環境は厳しさを増し、人材の確保は容易ではなくなりました。経験を積んだ人材に依存する構造は、持続可能性の観点からも限界が見え始めています。さらに、生成AIの登場によって、これまで難しいとされてきた言語化や構造化のハードルが大きく下がりつつあります。

この変化が意味するのは、「これまでできなかった」という理由が、徐々に通用しなくなってきているということです。


かつてはコストの問題で断念されていた取り組みも、いまは現実的な選択肢として検討できるようになっています。言語化が難しいとされていた領域も、AIの補助によって一定の水準まで引き上げることが可能になっています。それにもかかわらず、従来と同じ前提のまま業務を運用し続けるのであれば、それはもはや制約ではなく、選択の問題として捉えられることになります。



問われているのは未来の前提である


ここで改めて重要になるのは、経営としてどのような未来を前提にするのかという判断です。人に依存する構造が続くと考えるのか、それとも、構造化とテクノロジーの活用によって、その依存度を下げていくのか。

どちらの方向を選択するにしても、その前提が曖昧なままでは、具体的な打ち手は定まりません。そして、その曖昧さの中で最も起きやすいのが、「現状の延長線上での対処」です。採用を強化する、教育を充実させる、業務負荷を分散する。いずれも必要な取り組みではありますが、それだけでは構造そのものは変わりません。


いま起きている問題は、高齢化そのものではなく、それによってこれまで見えにくかった構造の脆さが露呈している点にあります。そしてその脆さは、これまでの合理性の延長では解決できない領域に入りつつあります。



経営としての問い


いま、自社の業務はどの程度まで構造化されているのでしょうか。個人の経験や判断に依存している領域は、どこにどれだけ存在しているのでしょうか。そして、それは意図的に選択されたものなのか、それとも結果として残ってしまっているものなのでしょうか。

また、自社が前提としている未来はどのようなものなのでしょうか。その前提は、組織の中で共有されているでしょうか。


これらの問いに対する答えは、現場の努力だけでは導き出すことはできません。むしろ、現状の構造をどのように捉え、どこに設計上の課題があるのかを客観的に把握することから始まるのではないでしょうか。

その意味で、カスタマーサポートのDXを推進するにあたっては、単なるデジタル化ではなく、組織そのものの構造をどのように再設計するのかという視点が不可欠になります。

いま、自社の構造はどのような状態にあるのか。そして、その構造は未来に耐えうるものになっているのか。

この問いに、経営として答えられているでしょうか。

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