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既存顧客を支える窓口が、なぜコスト扱いされるのか

4月6日
読了時間: 4分

更新日:6月14日

獲得に注ぐ情熱は、維持にも注がれているでしょうか——サポート窓口に眠る、見えない資産




「解約の電話を受けたとき、初めてその顧客の大きさに気づく。カスタマーサポートの現場では、そんな場面が珍しくありません。何年も使い続けてくれていた顧客、安定した収益をもたらしてくれていた顧客。その存在の重みは、去り際になって初めて輪郭を持ちます。


既存顧客は、どんな企業にとっても事業の土台です。継続的に収益をもたらし、時には周囲に勧めてくれます。そして、その顧客が日々接触する窓口こそ、カスタマーサポートです。


それなのに、この最も大切な顧客を支える窓口は、しばしば「コスト」として管理されています。なぜ、最大の資産を守る機能が、コスト扱いされてしまうのでしょうか。



獲得は語られ、維持は語られない


新規顧客の獲得には、明確な投資と評価指標があります。広告費、キャンペーン、乗り換え特典。獲得単価が計算され、コンバージョン率が追われ、成果が可視化されます。マーケティング部門の存在意義そのものが、この「獲得」に紐づいていると言ってもいいでしょう。


一方で、既存顧客との関係維持はどうでしょうか。専任の予算があり、明確な指標で評価され、組織的に投資されているケースは、それほど多くありません。「すでに獲得した顧客」は、いわば達成済みの成果として扱われ、関心の対象から外れていきます。


ここに、奇妙な非対称が生まれます。獲得には多くの情熱と資源が注がれるのに、維持には注がれない。新規顧客一人を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの数倍にのぼると言われます。にもかかわらず、組織のエネルギーは獲得に大きく傾いているのです。


なぜ既存顧客は「前提」になってしまうのでしょうか

理由の一つは、既存顧客との関係が「当たり前に続いているもの」として認識されてしまうことにあります。毎月の利用、安定した入金、特に問題のない関係。順調であるがゆえに、注意を向ける必要がないと判断されてしまうのです。


水の中の魚が水の存在に気づかないように、当たり前にあるものは意識から消えていきます。既存顧客との関係は、まさにその「水」になりやすい。問題が起きて初めて、その関係の存在に気づく。解約の申し出があって初めて、その顧客がどれだけの価値を生んでいたかを知る。こうした順序は、決して珍しくありません。


もう一つの理由は、関係維持の成果が見えにくいことです。獲得は「増えた数」で示せますが、維持は「減らなかった数」です。何も起きなかったことを成果として評価するのは難しく、だからこそ予算も意識もつきにくいのです。


関係は「資産」として捉えられているでしょうか


財務諸表には、顧客との関係を示す科目はほとんどありません。設備や在庫は資産として計上されますが、長年かけて築いた顧客との信頼関係は、貸借対照表のどこにも現れません。


ただ、実態としてそれは紛れもなく企業の資産です。継続的な収益をもたらし、新規獲得コストを抑え、口コミによって新たな顧客を連れてくる。LTV(顧客生涯価値)という概念が注目されるのは、この「見えない資産」を可視化しようとする試みでもあります。


ある通信会社では、解約率の改善に本格的に取り組んだ結果、新規獲得を増やすよりもはるかに効率的に収益が安定したという例があります。既存顧客との関係を資産として捉え直したことで、投資の優先順位そのものが変わったのです。


カスタマーサポートは、この資産を守る最前線にいます。既存顧客が日々接触するのは、まさにこの窓口だからです。にもかかわらずコストとして管理されているとすれば、それは「最大の資産を守る機能を、コストとして扱っている」ことになります。


守るべき資産に、目を向ける


自社にとって、既存顧客との関係はどのように位置づけられているでしょうか。獲得に注いでいる情熱と資源は、維持にも注がれているでしょうか。


関係維持を担う部門には、明確な予算と評価指標があるでしょうか。それとも、「当たり前に続くもの」として、意識の外に置かれていないでしょうか。


もしまだ答えが明確でないのであれば、「既存顧客との関係を、資産としてどう捉えるか」という視点から見直してみてはいかがでしょうか。

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